本当の聖者
オスカー・ワイルド作「サロメ」、一幕による悲劇
この戯曲も大好きな作品の一つで繰り返し読んでます。
これはしびれる。台詞がびしびし心を刺します。
そしてラストの壮絶な世界と終結。
構成もさることながら、脇役の台詞一つとってもしびれます。
冒頭、預言者ヨカナーンを幽閉している兵士達の会話で
「あれは聖者なのだ。それに至って優しい。おれは毎日、食事を運んでやる、あの男はそのたびに礼をいう。」
というのが、あります。この台詞だけでも預言者ヨカナーンの人となりがうかがえるようになっています。
壇上で吼えるエセ宗教家にだまされる人々がいる一方で、この兵士は、学は無くとも、当たり前のことを当たり前にできる人をちゃんと評価しています。
この兵士の視点は現代でも重要なことではないかと思います。
こういう台詞の積み重ねをして劇を構成していけるオスカー・ワイルドは天才だと思います。