名人伝 | Destiny's Blog

名人伝

名人伝 中島敦の短編小説


弓の名人が、弓を極めていって、山にこもり、下山して来た時には、もう弓を持つこともなく、晩年には弓のことさえ忘れるというお話。


解釈はいろいろあるかと思いますが、悟りに置き換えると、悟りを求めて、山にこもって深めていった人が、悟りを極めた時、悟りをいうことは忘れて、下山して市中に暮して一般人と変わらぬ雰囲気で毎日を生活し、死んでいくのではないか。


朝起きて、家の周りを掃除して、朝ご飯を食べ、働きに出かけ、お昼にお弁当を食べ、夕方帰って来て家族で食事をし、就寝する。

常に柔らかい物腰でにこにこと笑い、困っている人がいれば助け、悪を働く人には諭す。


名人は厳つい風貌でもなく、鋭い気を発している訳でもないので、すれ違う人も名人だと気付かないが、横を通った時に妙なる香りを感じ、思わず振り返る。

だが、名人はもうそこにはいない。